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家族信託コラム

解決事例「障がいを持った子」を持つ親が亡くなる前にしておく大切なこと

障がいを持った子を持つ親の悩みは、自分の亡き後、子どもがどのように生きていくかということです。それを解決する方法の一つとして、「家族信託」があります。「家族信託」は、遺言後見を補完するしくみで、さまざまな法律の問題点を解決してくれる道具として注目されています。

信託とは何ですか?

信託とは、「財産を持っている人(委託者)が、自分が信頼する人(受託者)に財産を託して、定められた目的(信託目的)にしたがって財産を管理・処分してもらい、財産から得られる利益を定められた人(受益者)へ渡す仕組み」のことです。

障がいを持った子を持つ親が持つ悩み

ある事例をご紹介させていただきます。これを元に一緒に考えていきましょう。

Aさんは、現役時代は大手自動車メーカーのサラリーマンで、Bさんは専業主婦をしていました。AさんとBさん夫婦には一人息子がいます。その息子Cさんには生まれつきの障がいがありました。その障がいのため、Cさんは自分では財産を管理ができません。障がいを持った子を持つ親にとって、子どもが成長し、自分も年を取ってしまい、自分の亡き後の子どものことはとても心配なことです。60歳を過ぎた、AさんとBさんも同様です。今は、AさんとBさん夫妻が元気なので、Cさんの世話をすることができていますが、どちらかが倒れてしまったり、自分たちが亡くなった後のことを考えると、一人息子であるCさんのことをとても心配しています。
また、AさんBさん夫妻には十分な財産がありました。Cさんが生まれつき障がいがありましたので、贅沢もせずCさんのために一生懸命貯めました。貯めたお金は、AさんとBさんが亡くなった後、自分たちが残した遺産を使ってCさんが不自由なく暮らしていって欲しいと考えています。
そして、もし、Cさんが亡くなった時点で財産が残った場合は、親族や、Cさんがお世話になった福祉施設、あるいは障がいを持った子どもたちに寄付するなど、遺贈したいと考えています。ただ、Cさんには財産管理をする能力がないので、それが可能かどうか心配していました。

障がいのある子を持つ親の不安を解説

親御さんが、自分たちが亡くなった後にお子さんが生活するのに十分な遺産を残しても、そのお子さんに判断能力が無ければ、悪い人に財産を取られてしまうかもしれません。

このケースの場合、Cさんに成年後見人がついていれば、後見人がCさんに代わって財産を管理してくれますが、Cさんは遺言を作成することができず、相続人もいないので、Cさんが亡くなった後、財産は原則として国庫に帰属してしまいます。
仮に信託を利用すれば、AさんとBさんが亡くなった後も、信託行為に従って受託者であるDさんが、財産をCさんのために使用してくれますし、Cさんが亡くなったときに信託を終了させて、残った財産をもらう人(残余財産帰属権利者や残余財産受益者)を定めておけば、その人に財産を承継させることができます。

信託による解決方法

まず、Aさんが委託者となり、信頼できる親戚のDさん(このケースではCさんの従妹)を受託者にして、AさんとBさん夫妻が亡くなった後に、Cさんが受益者となる信託を組みます。
その際には、弁護士などのような専門家を信託監督人や受益者代理人に指定しておきます。そうすれば、受託者Dさんが勝手に財産を使ってしまったりして、障がいを持ったCさんが損害を被ることも回避できます。
さらにCさんが亡くなった後の残余財産については、その帰属先を、親族や、Bさんがお世話になった福祉施設や障がい者施設にしておけば、障がいを持ったCさんが遺言を作ったのと同じ効果をあげることができます。親御さんにとっては、最後のお礼や、社会貢献もできるので安心です。

解決のポイント

Aさんは、信託を組まれた後、「本当は、自分と一緒にこの子をあの世に連れていかないといけないかな、と思った時もありました。でもそれができないから、本当に困りました。せめて私たちの亡き後、子どもが不自由なく健やかに、穏やかに、迷惑をかけないように生きていってもらいたいから、一生懸命お金を貯めました。」とおっしゃっていました。家族信託を組んだことにより、不安はないとは言い切れないですが、一応、AさんBさんの亡き後の解決方法も見つけることができ、今ではほっとしているとのことでした。家族信託に出会えてよかった。これが、親なき後問題の救世主となってくれると、安心されていました。

実際の事例を題材としておりますが、個人情報保護の観点から変更を加えている場合があります。

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