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家族信託コラム

解決事例地主のおじいさんが必要な財産管理方法は?

ズバリ「信託」です。
今、話題の、遺言後見を補完するしくみとして注目されている、「家族間の信託」についてお話しします。

信託とは何か?

信託とは、「財産を持っている人(委託者)が、自分が信頼する人(受託者)に財産を託して、定められた目的(信託目的)にしたがって財産を管理・処分してもらい、財産から得られる利益を定められた人(受益者)へ渡す仕組み」のことです。
下記の図でいうと、委託者がおじいさん、受託者が娘、受益者がおばあさん(配偶者)になります。これが一般的な「家族信託」です。

出典:家族の財産を管理・承継する仕組み(家族信託) - 家族信託 | 遺言・相続・家族信託相談センター 名古屋

事例

では、具体的にはどういった場合に信託が使えるのでしょうか?
具体的な事例で見ていきましょう。

おじいさんのプロフィール

おじいさん(Aさん)は、代々続いている地主です。自分の土地に家を建て、奥さんと二人暮らしです。また、自宅の隣に息子夫婦と二人の孫の家を建て、仲良く生活しています。
おじいさんは、建設会社でサラリーマンをしていました。サラリーマンの傍ら、おばあさんと一緒に、代々続いている賃貸アパートのほか、月極駐車場などの収益不動産で大家業をしていました(現在も大家です)。
その他の財産としては、株式や投資信託といった投資資産も持っています。お金には困っていない、裕福な家族といえます。

おじいさんの悩み

おじいさんは、今後も、必要に応じてアパートを建て替えたり、資産を積極的に運用して利益を得たりしたいと考えています。一方で、息子への相続対策もしていかないといけないと考えています。
なぜなら、暦年贈与をしてある程度は資産の移転をしてきたのですが、自分の財産を相続するにあたり、まだ娘が十分な納税資金を用意できていないからです。
だから、自分が死んだ後の相続税の支払いに備えて、駐車場を売却して現金化したいと考えています。また、将来、自分が重病や認知症になったら、自分の希望どおりに資産活用や処分ができなくなるのではないかと心配しています。
というのも、自分が判断力を失った時に財産を管理してもらう「後見」制度は、本人の財産を守るための制度なので、リスクを取って資産を運用したり、収益性を上げるためにアパートを建て替えたり、納税資金を準備するために不動産を売却したりすることはできないと聞いたからです。

解決方法

おじいさんのような方はたくさんおられるのではないでしょうか?
では、具体的にどのようにしたら、すっきりした解決方法が導き出されるのでしょうか?

成年後見

高齢になると、体力や判断力が減退したり喪失したりして、自分で自分の財産を管理・処分することが難しくなるということが起こりがちです。
このようなときに本人に代わって財産を管理処分するために利用するのが成年後見制度です。
成年後見制度は後見人が本人(被後見人)のために本人に代わって財産を管理処分するものです。

成年後見の欠点

しかし、後見制度を利用するといろいろと不都合なことが起きます。

例えば後見が始まると本人は「被後見人」となり、一切の財産を管理処分することができなくなります。会社の取締役や監査役になれませんし、遺言も特別な要件の下でなければ作れません。

また、後見人が行う財産の管理処分は、本人の財産の維持管理に必要・有用である場合にしか認められません。本人の自宅不動産の処分は生活費や入院・介護費用を賄うために売却するほかない場合にしか認められませんし、自宅以外の不動産の処分もその必要性が問われます。納税資金を確保するために不動産を売却したり、財産を組み替えたりすることは認められませんし、投機的な取引もできません。

いったん後見を始めると判断能力を回復しない限り本人が死ぬまで継続することとなります。

ではどうすればいいの?

信託を利用しましょう!
信託を利用すれば、管理・処分を委ねる必要のある財産だけを選んで信託を設定すれば良いですし、信託を設定することによって、本人が能力や資格に制限を受けることもありません。信託契約にどのように管理処分をするか定めておけば、アパートを建てたり、不動産を売ったり、投機的な取引を行ったりすることも可能です。
ただし、このケースの場合は、上の図とは少し異なります。委託者=受益者となります。つまり、おじいさんが息子さんに依頼して、おじいさんが生きている間は、おじいさんが利益を得られるということになります。

出典:家族信託の活用事例 - 家族信託 | 遺言・相続・家族信託相談センター 名古屋

信託による解決方法

家族間信託を使い、息子さん(Bさん)を受託者にして管理して欲しい財産を信託し、自分自身を受益者にしておけば、おじいさんが判断力を失った後も、息子さんがリスクを取って資産を運用したり、相続税の節税や納税資金を準備するために不動産を処分することができます。

信託では、委託者が判断力を失った後も、財産が信託目的に従って管理処分されますので、後見ではできない積極的な財産管理処分をすることができます。

弁護士などの専門家を信託監督人や受益者代理人に選任しておけば、受託者である息子さんに適切に任務を行わせ、受益者の権利を守ることもできます。

解決のポイント

信託を利用して後見では実現できなかった希望を実現することができます。

信託を後見に代えて利用したり、後見と組み合わせて信託を設定して、本人の希望に添った財産管理を実現することができます。委託者にとってベストな方法を考えることが最優先です。ベストな方法であれば、家族信託は、使い勝手の良い一つの解決方法になり得ます。

実際の事例を題材としておりますが、個人情報保護の観点から変更を加えている場合があります。

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