名古屋の弁護士 さくら総合法律事務所

企業法務コラム

経営法務コラム

相談事例新型コロナウイルス感染症と下請法

ご相談者
企業形態 株式会社
役職 代表取締役
事例の分類

経営法務

ご相談内容

会社経営者の方(会社の資本金は1億円)から「新型コロナウイルス感染症の影響で、取引先(資本金3億円超)から半製品の受け取りを断られてしまいました。このため半製品の製造をストップし、仕入れ先(資本金1000万円)に特注した半製品の部品が納品されても使い道がなくなってしまいました。どのように対応すればよいでしょうか。」と相談を受けました。

弁護士の回答

新型コロナウイルス感染症の拡大により、企業の事業活動が停止・縮小するなど、経済に混乱が生じています。
このような中、例えば操業停止を理由に下請事業者からの納品受取りを拒否したり、納品した物品を返品したり、資金不足を理由に下請事業者に対する代金の支払時期を遅延したりすると、下請代金支払遅延防止法(下請法)に違反することになります。

下請法は独占禁止法の特別法で、下請法が定める形式的要件に該当する取引を、類型的に不公正な取引として禁止するものであり、たとえ下請事業者が了承していても、あるいは親事業者に違法性の意識がなくても、下請法に違反することになります。
下請法の適用対象となる取引は「製造委託」など4類型で、取引類型ごとに資本金の金額によって形式的に親事業者と下請事業者に該当することになり、親事業者は下請事業者に対して、発注書面交付義務など4つの義務を負い、発注した物品の受領拒否など11の行為が禁止されます。
親事業者が下請法の義務に違反した場合には罰金を課されます。親事業者が禁止行為を行ったときは勧告がなされ、違反行為が公表されます。
下請法に違反することにより、事業者の社会的信用が大きく損われるおそれがあります。

政府は、親事業者が、新型コロナウイルス感染症の拡大により発生したリスクやコストを下請事業者に転嫁する動きを阻止するため、業界団体を通じて、下請事業者、個人事業主・フリーランスとの取引に対する配慮を求めるとともに、中小企業庁の下請取引調査員(通称「下請Gメン」)を補強して監視を強化しています。

親事業者にあたる事業者は、新型コロナウイルス感染症拡大の状況下においても、下請法に違反しないよう十分に留意する必要があります。
下請事業者にあたる事業者は、親事業者から下請法に違反する要求を受けたときには、親事業者に対して下請法に違反することを指摘し、あるいは国が設置している「下請かけこみ寺」又は「下請Gメン」に相談又は情報提供して是正を求めることが考えられます。

半製品・特注部品の製造委託は下請法が対象とする取引類型の一つです。
製造委託の場合、資本金3億円超の法人と資本金3億円以下の法人及び個人との取引、又は資本金1千万円超の法人と資本金1千万円以下の法人及び個人との取引は、親事業者と下請事業者との取引とされます。
したがって、御社と取引先、仕入れ先と御社の取引は、いずれも下請事業者と親事業者との取引として下請法の対象となり、半製品又は部品の受け取りを断ることは下請法が禁止する受領拒否にあたります。
仕入れ先から部品の受領拒否をして下請法に違反することがないように注意して下さい。
また、取引先に対して、半製品の受領拒否は下請法に違反するので、受領するよう申し入れて下さい。

なお、公正取引委員会は、新型コロナウイルス感染症に対する事業者・事業者団体の取組と独占禁止法・下請法の解釈については、東日本大震災の際の「震災等緊急時における公正取引委員会の対応について」を参考にするよう公表しています。
そこで引用されている「東日本大震災に関連するQ&A」では、形式的には下請法違反の事案について、親事業者と下請事業者の協議による解決が示されています(問4及び問10)。形式的に要件に該当する場合には、下請事業者の承諾があっても違反になるという下請法の立て付けとは相異なるものであり、緊急事態下での特別の解釈であるといえます。
但し、これらはいずれも親事業者が被災して工場や保管施設が滅失し、物品受領が客観的に不可能になった事案を想定しており、新型コロナウイルス感染症のまん延という状況で同様の解釈の余地があるかは慎重に検討すべきと思われます。

さくら総合法律事務所では、新型コロナウイルス感染症に関する相談も受け付けています。
ご心配事がありましたら、さくら総合法律事務所までご相談ください。

この記事は令和2年5月6日現在の情報に基づく作成しています。

実際の事例を題材としておりますが、個人情報保護の観点から変更を加えている場合があります。

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