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経営法務コラム

相談事例新型コロナウイルス感染症による休業と給与・手当

ご相談者
企業形態 株式会社
役職 代表取締役
事例の分類

経営法務

ご相談内容

会社経営者の方から「新型コロナウイルス感染症の影響で、事業を休止し従業員を休業させることを考えているが、給与や手当について詳しく知りたい」というご質問がありました。

弁護士の回答

新型コロナウイルス感染症のまん延により、特別措置法に基づく緊急事態宣言が発出されていましたが、令和2年5月4日、実施区域を全国としたまま、実施期間の終期が5月6日から5月31日まで延長されました。
新型コロナウイルス感染症の影響は全世界に及び、住民に対する外出自粛要請、事業者に対する休業協力要請などにより、事業活動は大きな影響を受けています。
事業を休止し、従業員を休業させることを選択する事業者も増えてくるものと思われます。

従業員を休業させた場合の賃金・手当について

休業、賃金、手当に関する事項は、事業者と従業員との間の労働契約、事業所の就業規則、事業者と労働組合等との間の労働協約に定めがあればそれによります。
そこで、まずは労働契約、就業規則、労働協約に定めがないか確認してください。

特に定めがないときには、事業者の、休業させた従業員に対する給与・手当の支払義務は、法的には以下のいずれかにあたるものとして整理されます。

  1. 事業者がわざと又は落ち度によって従業員を働くことができない状況を作ったときには、事業者は従業員に給与全額を支払わなければなりません(民法第五百三十六条2項)。
  2. 事業者が自主的判断で従業員を働かせないときには、事業者は従業員に対して休業手当を支払わなければなりません(労働基準法第二十六条)。
  3. 事業者が不可抗力によって従業員を働かせることができないときには、事業者は従業員に対して給与も休業手当も支払う必要がありません(民法第五百三十六条1項)。

法的に整理できるとしても、実際に、その休業が1~3のどれにあたるかを区別するのは容易ではありません。
具体的に、新型コロナウイルス感染症が事業にどのような影響を与えているのか、どうして休業をするのか、などを検討して区別するしかありません。

1にあたるのは、従業員を働かせないことに事業者が落ち度がある場合です。不当解雇をした従業員に対して、職場復帰・合意退職などで解決するまで間の給与を支払う(バックペイ)のがこれにあたります。
新型コロナウイルス感染症がまん延する状況下で休業する場合に即していえば、例えば、新型コロナウイルス感染症の拡大にもかかわらず、休業することに合理性がない事業者が、あえて休業をして従業員を働かせない場合が考えられます。

2の「事業者が自主判断で」という表現は限定的な意味ではなく、1にも3にもあたらない場合という趣旨です。

2と3は、休業が「不可抗力」と言えるかどうかによって区別されます。

不可抗力とは、①その原因が事業の外部より発生した事故であること、②事業主が通常の経営者として最大の注意を尽くしてもなお避けることのできない事故であることの2つの要件を満たすものでなければならないと解されています。

新型コロナウイルス感染症のまん延に伴う貿易、流通、生産活動の世界的混乱、緊急事態宣言のもとでの休業協力要請などは、いずれも「事業の外部から発生した事故」と言えるでしょうが、このような事態が、事業者が営む事業を休業する原因といえるかどうか、休業が避けることできなかったかどうかの判断は容易ではありません。
少なくとも、事業者の営む事業の内容、コロナウイルス感染症が事業に影響を与えた事情、代替手段の可能性、事業者が休業回避のためにした方策などを具体的に検討しなければ判断できません。
例えば、製造業で新型コロナウイルス感染症の影響で調達できなくなった原材料を他のルートから調達したり代替の原材料で製造できないか、飲食業で飲食の提供から惣菜販売にするなど事業の転換ができないか、従業員を配置転換できないか、在宅勤務で事業を継続できないか、などが考えられます。

以上を検討した結果、

  • 事業者の落ち度による休業といえる場合(1の場合)、事業者は従業員に給与全額を支払います。
  • 不可抗力による休業といえない場合(2の場合)、事業者は従業員に休業手当を支払います。休業手当は平均賃金の6割以上でなければなりません。
  • 不可抗力にあたる場合(3の場合)、事業者は従業員に給与も手当も支払わなくてよいことになります。

休業により、従業員が給与も手当も全くもらえない(3の場合)、又は平均賃金の6割しかもらえない(2の場合)となれば、従業員の生活は大きな打撃を受けることになります。
従業員が離職せず、新型コロナウイルス感染症による混乱を乗り越えた後で、再び会社のために働いてくれるよう、事業者が、従業員と話し合いをして、従業員に対する特別の手当を支給することにしたり、休業手当を平均賃金の6割より高く設定したりすることも一つの経営判断であると考えます。

なお、休業手当については新型コロナウイルス感染症にかかる雇用調整助成金の特例措置によって1人1日8,330円を上限に平時より手厚く助成されています。
公的支援策を利用して雇用の維持に努めてください。

さくら総合法律事務所では、新型コロナウイルス感染症に関する相談も受け付けています。
ご心配事がありましたら、さくら総合法律事務所へご相談ください。

この記事は令和2年5月4日現在の情報に基づく作成しています。

実際の事例を題材としておりますが、個人情報保護の観点から変更を加えている場合があります。

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