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セミナー報告

日本相続学会オープンセミナー「令和3年民法・不動産登記法改正と相続実務」開催報告

2021年7月14日(水)に一般社団法人日本相続学会オープンセミナーが開催され、小柳春一郎先生(獨協大学法学部教授)を講師にお招きし、令和3年民法・不動産登記法改正と相続実務〜遺産共有管理・相続登記義務・土地所有権放棄〜」をテーマに講演をしていただきました。

新型コロナウイルス感染防止のため、Zoomによるオンライン配信のみとなりました。

講演の内容

小柳先生からは、「新法の内容説明」「具体例の紹介」「実務課題を探求」するという3つの目的を軸に講演いただきました。

2021年4月に所有者不明土地対策に関連した2つの法律案が国会で成立されたことについて、改正法律案が成立するまでの過程を概観しました。
その改正事項のうち、共有物管理具体的相続分主張期間制限相続登記土地所有権放棄を中心に現行の制度と新しい制度を比較しながら概要と詳細の説明をしていただきました。
小柳先生のご講演を聴き、私が理解したのは次のとおりです。

共有物管理について

現行制度では他の共有者の同意を得ずに共有物を使用している共有者が保護されていますが、多数決によってこのような共有者を追い出せるようになりました。不明共有者がいる場合にもそれ以外の共有者が同意すれば、裁判所の手続を使って共有物の重大変更ができるようになりました。

相続登記義務について

現行制度は相続登記と住所変更の登記義務は任意であるため、相続や引越しなどの住所移転で不動産の所有者がわからなくなることが多く問題視されてきました。改正によって相続人申告登記という新たな登記制度ができて、相続があったことを公示する手続きが簡単になる一方で、相続登記は義務化され3年以内に登記をしなければ義務懈怠として10万円の過料、住所変更も申請が義務化され義務懈怠は5万円の過料となります。この過料については、登記官による催告と「正当な理由がないのにその期間内に登記申請がされなかった」場合に課されます。「正当な理由」の基準は今後通達が出される予定ですが、催告を受けたら早急に対応が必要になりそうです。

相続土地所有権移転制度について

「土地所有権放棄制度」として検討が重ねられてきたものです。これまで相続などにより土地を望まずに取得することとなった所有者の負担が問題視されてきました。改正によってそのような土地の所有権を国家に帰属することが可能となりましたが、単独行為型の放棄にはなりませんでした。また、この制度を利用するためには、人・モノ・お金それぞれについて制約が設けられ、法制審議会で当初諮問された「土地所有権法規制度」とは異なる意味合いの制度になりました。

改正法適用前に準備が必要!

小柳先生が「今は概要を伝え、施行時には完全な知識を持ち、すぐに使える必要」があるとおっしゃっていたように、すぐに改正法が適用されるわけではありませんが、おおよそ今後2年の間に適用されることを踏まえて、改正されてからではなく、事前に研究し、改正に備えた準備が必要です。

今回の改正は、平成30年に行われた相続法の大改正よりも相続実務に大きなインパクトを与えるものになるかもしれません。相続に携わる仕事をするものとして、今回の改正法を研究する必要性を強く感じました。

感想

小柳先生は、不動産法とフランス法を専門に研究をされており、多くの著書を出されています。所有者不明土地に関連した2つの法律案が本年4月に成立されたことを踏まえて、現行制度と新制度を比較しながら細部に至るまでとてもわかりやすく講演いただき大好評でした。
小柳先生、素晴らしい講演をありがとうございました。

コロナのお陰でオンライン配信にも慣れてきましたが、1日でも早くみなさんと直接お会いしてセミナーを開催できることを願っています。今後は、会場参加とオンライン参加を併用していくことで、時間や場所にとらわれず、多くの方に参加いただけるのではないかと思います。皆様のご参加をお待ちしています。

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