名古屋の弁護士 さくら総合法律事務所

企業法務コラム

債権回収コラム

解決事例未払い工事代金を遅延損害金を含めて回収した事例

ご依頼主
業種配管工事業
事例の分類

債権回収

事例の概要

ご相談内容と状況

依頼者A社は、B社の下請けとして工事を何件か請け負いましたが、注文にかかる工事は小規模なものばかりであったため、「B社の指定する単価では赤字になってしまうので今後は受けられない。」と以後の受注を断ったところ、B社から「今後はA社が配管工事に要した作業員の日当計算で工事代金を支払うから工事を請けて欲しい。」と懇請され、やむなくその後の工事も請け負いました。
しかし、A社が工事を完成させた後に日当計算で算出した工事代金400万円を請求したところ、B社は「日当計算で代金を支払うと約束したことはない。」と単価計算の代金を超える工事代金の支払い義務を否定し、さらに「工事材料の立替金と相殺したので単価計算の工事代金も全額消滅した。」と主張して、支払を一切拒否しました。

A社は、B社から工事代金の請求をして欲しいと当法律事務所に相談に来ました。

弁護士の対応

弁護士はB社に通告書を送付し、B社担当者と折衝しましたが、交渉は決裂し、訴訟提起に至りました。

工事代金は作業員の日当計算により算出するとの合意が書面で取り交わされていなかったため、主張・立証は非常に困難でした。
支払拒絶前のA社の工事内容とB社の支払金額を分析し、関係者の陳述書を取り付け、A、B双方の担当者らの尋問を行うなどして、主張・立証を行いました。
この結果、第一審ではA社の請求どおり400万円の支払をB社に命じる勝訴判決が下されました。

B社の代理人弁護士に支払を催告しましたが、返答のないままB社は高等裁判所に控訴を申し立てました。
当方が、仮執行宣言の付された一審の判決を利用してB社の取引銀行の口座を差押えたところ、B社が強制執行の停止決定を取りました。
控訴審でもB社は和解を拒否したので判決となりました。控訴審判決もB社の控訴が棄却されてA社の全面勝訴でした。そのまま上告されずにA社の勝訴が確定しました。

結果

判決確定後、B社の代理人弁護士から支払額の減額や分割弁済による示談の申し入れがありましたが、一切拒否したところ、支払日までの遅延損害金も含め460万円の支払がなされました。

解決のポイント

債権回収という観点から言えば、B社の取引銀行の口座を差し押さえたのが弁済を後押ししたのだろうと推測されます。
差押えによりB社の取引銀行に対する信用は大きく傷ついてしまいましたので、信用回復のためには、当方の要求に応じて差押えを取り下げてもらうほかないからです。

工事代金の争いという点からは、請負代金について、B社が日当計算で請負代金を算出することを了承している旨を裏付ける契約書その他の書面(代金額入りの発注書、代金額入りの見積書へのB社の承認印、今後の工事代金は作業員の日当計算で計算する旨の合意を明らかにする覚書など。)があればもっと早期に、訴訟を経ることなく解決していただろうと思います。工事代金が明らかであれば、代金不払いは建設業法違反となりますので、支払に応じたと思われます。
建設請負契約やソフトウエア開発契約では、請負代金について書面を取り交わすことなく作業を進め、後日代金額の争いになったという紛争を多く経験します。このようなトラブルを回避するためには契約書その他の書面をきちんと取り交わすことが肝要です。

実際の事例を題材としておりますが、個人情報保護の観点から変更を加えている場合があります。

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