名古屋の弁護士 さくら総合法律事務所

個人法務コラム

相続・遺言コラム

解決事例相続放棄によって債権者の請求を免れた事例

ご依頼主
年齢

30代

性別

男性

事例の分類

相続放棄

事例の概要

ご相談内容と状況

相談者の父親は借地に自宅を建てて家族で住んでいましたが、相談者は10年以上前に独立して家を出ています。5年前に父親が死去したあとは、相談者の母が自宅に住み続け、地主に地代を支払ってきましたが、3年前に体調を崩して自宅を出て施設で生活しています。
半年前に地主から相談者に通知が送られてきて、母親の地代滞納により借地契約を解除したので、建物を取り壊して土地を明け渡すよう要求されました。
父親は自宅の他に遺産がなく、自宅は母親が相続して名義変更も終えていると思っていましたが、調べてみると建物は未だ父親の名義になっていました。地主は、相談者も父親の相続人として建物を取り壊して土地を明け渡す義務があると言います。
相談者は建物を取り壊す経済的余裕はなく、対応方法を考えあぐねていたところ、地主から土地の明け渡しと、明渡までの地代相当損害金の支払いを求めて地方裁判所に訴訟を提起されてしまいました。
相談者は、訴訟への対応方法が分からず、当法律事務所を訪ねていらっしゃいました。

弁護士の対応

建物は父親の遺産ですので、相続人である相談者は建物を取り壊して土地を明け渡さなければなりません。明渡までの地代相当の損害金の賠償責任も負ってしまいます。
相談者に話を伺うと、父親の相続で相談者は何の遺産も受け取っておらず、自宅の敷地も父親の名義だと思っており、借地であることは今回の請求があるまで知らなかったと言うことでした。
そこで、家庭裁判所に父親の相続について相続放棄の申述をすることにしました。父親が亡くなってから5年が経過していましたが、家庭裁判所は審理の結果、相続放棄の申述を受理してくれました。

結果

土地明渡の裁判に、相続放棄の申述受理証明書を提出したところ、地主は相談者に対する訴訟を取下げ、相談者は請求を免れることができました。

解決のポイント

民法915条は、「自己のために相続の開始があったことを知った時から3箇月以内に、相続について単純若しくは限定の承認または放棄をしなければならない。」と定めています。
相続発生後3箇月を経過しても、相続の開始があったことを知った時から3箇月以内であれば、相続を放棄することは可能です。そして、被相続人の資産や負債の存在を知ってから3箇月以内であれば、被相続人が死亡したことを知ってから3箇月を経過した後であっても相続放棄が認められることがあります。
相続から長期間経過しているからといって相続放棄を諦めてしまわなかったことにより、債権者からの請求の阻止に成功しました。

実際の事例を題材としておりますが、個人情報保護の観点から変更を加えている場合があります。

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